活用にあたって

2016年4月公開

1.広島県外の被爆者および被爆者団体編集・発行の原爆手記集の活用

被爆者は、広島県内のみならず全国各都道府県および海外にも在住している。これら県外在住の被爆者の手記が、1985年((被爆40年)頃から各地の被爆者団体により持続的に出版されている。「資料4 全国(広島県を除く)の県別被爆者数と国に提出された原爆手記数」、「資料5 広島県外の原爆被爆者団体等による原爆手記集出版状況」、「資料6 海外在住被爆者の手記・掲載書誌情報」は、その概要をまとめたものである。

被爆からの時間の経過や被爆地からの距離の隔たりに応じ、原爆手記の持つ地域情報の役割は減少しがちである。しかし、県外の手記に含まれる地域情報は、広島では貴重である。  被爆体験は、原水爆禁止運動・反核運動のエネルギーの源泉であった。また、1980年代からは、被爆体験の証言活動を中心とした被爆者運動は、日本の運動の中心的役割を果たすようになった。広島県外の被爆者団体が編集・発行した手記集や年史からは、国内外で被爆体験に基ずく平和運動が多様な形で展開してきたことを知ることができる。

2.原爆手記掲載書誌の所蔵情報の充実

『総目録1972年』では、広島県立図書館・広島市立浅野図書館(現・広島市立図書館)・原爆資料保存会文庫室(現・広島平和記念資料館)・広島大学原爆放射能医学研究所(以下広大原医研と略称)の所蔵情報が掲載されていた。日外アソシエーツ社は、『原爆手記掲載書・誌一覧』(宇吹暁編著、広島大学平和科学研究センター刊、1996年。以下『書・誌一覧』と略称)の書誌情報の加除訂正をおこなうとともに、国立国会図書館所蔵の所蔵情報を加え、『原爆手記掲載図書・雑誌総目録 1945年―1995年』(宇吹暁編著 3677冊・手記収録数3万8955編。以下『総目録1995年』と略称)として出版した。
原爆手記の活用には、出版情報に加え、所蔵情報が必須である。原爆手記を所蔵する機関の連携による所蔵情報の充実が望まれる。

3.『総目録2015年版』改訂版にもとづく原爆手記出版状況の再分析

被爆者数(原子爆弾被爆者健康手帳所持者数)は、1981年3月には37万2264人を数えたが、その後は次第に減少し、約30年の歳月を経て、その数は半減している。原爆手記をめぐる状況も徐々に変わっている筈である。『書・誌一覧』では、下記の項目について分析をおこなっている。『総目録2015年版』をもとに同様の分析をおこなえば、過去20年間の変化の状況を明らかにし、新たな被爆手記が生まれなくなる時代に向けた対応について多くの示唆がえられることであろう。

◎年別出版状況(資料7、8)
◎発行主体別出版状況(資料9、10)
◎手記の普及状況
◎執筆者の被爆地別状況
◎掲載書誌数
◎手記(集)出版の動機

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