これは、広島・長崎の被爆から70年間に出版された「原爆手記」を掲載した単行本と逐次刊行物の目録(デジタル・データベース)である(以下『総目録2015年版』と略称)。ここで「原爆手記」とは、「原爆体験記」、「原爆被害者としての社会的発言」、「原爆被害者の家族、被爆二世・三世の手記」、「聞き書きのうち原爆被害者が一人称でまとめられているもの」の総称である。
今回の作業により、2015年末までに発行された5895冊の原爆手記掲載書誌の存在を確認することができた。
作成にあたっては、『原爆被災資料総目録第三集 原爆手記 広島の部』(原爆被災資料広島研究会編刊、1972年。以下『総目録1972年』と略称)および『原爆手記掲載書・誌一覧』(宇吹暁編著、広島大学平和科学研究センター刊、1996年。以下『書・誌一覧』と略称)の成果とその方法を踏襲した。
『総目録1972年』(対象は被爆後から1970年末までに刊行されたもの)には314冊の書誌名とともに、そこに収録された1712人の手記2229編の内容が要約されていた。『書・誌一覧』(対象は被爆50年末まで)には、3542冊(掲載手記数3万7793編)の書誌名と掲載手記数が収録されている。
広島大学原爆放射能医学研究所附属原爆被災学術資料センター資料調査室は、1974年4月から1988年12月の期間に収集した原爆関係図書の目録を出版している。『書・誌一覧』は、この情報に宇吹が他機関所蔵の図書情報を加えて作成したものである。このPDF版が、下記のURLで閲覧することができる。
http://ir.lib.hiroshima-u.ac.jp/ja/00015481
『総目録1972年』の「あとがき」は、「世界で唯一の被爆国といいながら,政府はその資料保存にたいしてまったくの無為無策であった」、「本来,原爆被災資料研究会の仕事は国家的事業である」と述べていた。幸いなことに、被爆50年を契機に、国(厚生省)による原爆手記への取り組みが始まる。国は、同年に実施した原子爆弾被爆者実態調査の付帯調査として「被爆体験記」を募集したが、これには、約8万9000件が寄せられている。さらに、1997年度には、広島市が、国の委託を受けて、これらの「体験記」の整理とこれまで出版された原爆手記の収集に乗り出した。この事業で集まった手記は、国が広島市平和公園内に設置した国立広島原爆死没者追悼平和祈念館(2002年8月開館)で公開されている。
広島市平和記念資料館が開設している「平和データベース」は、年々充実されてきた。中でも「本(単行本)」・「本(雑誌)」では、アップされた書誌の多くに目次情報が付されている。この情報は、国立広島原爆死没者追悼平和祈念館の情報とともに『総目録2015年版』作成のベースとなっている。
なお、両館所蔵状況は、下記のURLで閲覧できる。
国立広島原爆死没者追悼平和祈念館URL
http://www.hiro-tsuitokinenkan.go.jp/Books/DB/index.php
広島市平和記念資料館URL
http://www.pcf.city.hiroshima.jp/database/
作成作業は、「「紙碑」・原爆手記総目録編纂委員会」(宇吹暁、西本雅実、菊楽忍ほか)が実施した。
「「紙碑」・原爆手記総目録編纂委員会」は、『総目録2015年版』のデジタル・データベースの公開と本サイト「ヒロシマ通信」の開設で当面の役目を終える。引き続きこのサイトでは、「「紙碑」・原爆手記総目録編纂委員会」の成果の公開と活用の促進、『総目録2015年版』の内容にたいする疑問や今後の原爆手記活用などに関する提言を求めて、活動を続ける。